緩和ケア内科
主な対象疾患
概要
現代医学は多くの病気に対する対処法を見つけ出し、さらにはいのちの誕生や老化に対しても果敢な挑戦を続けています。結果的に、自然の摂理である「ひとは、老い、病にかかり、死んでいく」ということすら現代の日本においては、忘れさられているのではないでしょうか。確かに昔は「死の病」と思われていた「がん」 も現代医学の進歩のおかげで、半分は治るとみなされる状態にまで来ていると言えます。しかし、現実には残りの半分は治すということが出来ていません。
医学は第一義的には病気を治してしまうということを目標にしているため、どうしても病気が治らないこと=敗北と医療者は考えます。また、その考えは社会全体にも広く浸透していると言えます。
しかし、患者さんはどんなに苦しい状況であれ、最期まで自分の人生を生き貫かれ、そしてご家族や御友人たちに見守られています。がんの場合、そういう人たちを英語では「Cancer Survivor」と言い、賞賛の対象となっています。その勇敢な生き方を社会のみんなでお手伝いしましょう、と今から50年近く前にイギリスで生まれたのが、ホスピス=緩和ケアでした。つまり、緩和ケアは医療の枠から考えられたものではなく、社会運動から自然発生的に生まれたものだったのです。
そのような流れが生まれても、治るということが難しくなったがんの患者さんへの症状緩和をはじめとした取り組みはむしろ消極的なものというのが現実でした。病気の進行に伴い様々な症状が出現しても「がんだから仕方がない」ということで片付けられ、患者さんもそして医療者もその言葉に納得してしまうという状況が展開されたのです。
しかし、がんに伴う症状は決して特別なものではなく、私たちがお腹が痛くなったり、息が苦しくなったときに救急外来へ駆けつけるのと同じものなのです。痛みの緩和をはじめとした症状緩和は医療や看護の原点です。
現在、WHO(世界保健機構)は緩和ケアを「 生命を脅かす疾患による問題に直面している患者さんとその家族に対して、疾患の早期より、痛み、身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題に関してきちんとした評価をすることで、苦痛の予防と軽減を図り、生活の質(QOL)を改善するためのアプローチ』と定義しています。
緩和ケアは決して後ろ向きの医療ではなく、がん医療そのものを充実させる大切な医療です。それを証明するような「緩和ケア」にとって画期的とも思える論文が平成22年に「ニュー・イングランド・ジャ一ナル・オプ・メディスン」という医学界において1、2を争う有名な雑誌に掲載されました。
その内容とは、がん治療だけでなく、併せて患者さん自身の病状の理解を促す努力や意思決定の支援を行うことなどが、忠者さんの生活の質を高め、結果として予後(病気の治療後の経過)に良い影響を及ぼす、といったものだったのです。
これまでは、予後、端的に言えば寿命を延ばすには、がん病変を抗がん剤や放射線、あるいは手術などでなんとかしなければならない。緩和ケアが目指す1つの成果である、痛みなどの症状をとることによる生活の質の向上は、寿命とは全く関係ないと多くの人が漠然と考えていました。しかし、実際は寿命と関係するのだということが、科学的に証明されたのです。
平成11年11月1日に緩和ケア病棟(25床)を東8階に開設しています。ホスピス・緩和ケアの場とは、悪くて、「ダメ」だから行く最後の場ではなく、患者さんが、頂いた「いのち」を生ききるために少しでも良い時間・空間・医療環境などを提供するための場であると考えます。そして、患者さんやご家族が抱える痛み、身体的・心理社会的・スピリチュアルな様々な問題に対応するために、当科では医師・看護師・薬剤師・医療ソーシャルワーカー・栄養士、音楽療法士など多職種連携による医療を行っております。
疾患による症状への対応といった「身体を診る」はもちろんのこと、それだけではなく、「いのちを診る」、「家族を診る」といった3つの視点が「緩和ケア」 の礎であるということを忘れずに、スタッフ一同で患者さん、ご家族と接して参りたいと思っております。
病棟紹介
エントランス
デイルーム
病室(差額なし)
病室(日額4000円)
病室(日額10000円)
リフトバス
家族室
緩和ケアだより ~20周年記念号~
これを記念し、このたび「緩和ケアだより 20周年記念号」を発行することとなりました。 この記念誌には、緩和ケア病棟の20年のあゆみと緩和ケア病棟にかかわりのある方々に ご挨拶をいただきました。
今後も、皆様の当院緩和ケア病棟への思いや期待等を胸に、スタッフ一同、患者さんやご家族に真摯に向き合うよう、これからも一日一日を積み重ねて参りたいと考えております。
緩和ケアだより 20周年記念号